HOUSE
植物と暮らすやさしい中庭のある住まい
カナノイエ
2024.12
- 所在地糸満市
- 階数地上1階
- 床面積95.2㎡
CONCEPTコンセプト
この住宅は、沖縄県糸満市の閑静な住宅地に建つ。
敷地は幅8.2m・奥行き21.5mの細長い長方形であり、南北の短辺がそれぞれ二項道路に面している。これらの道路はいずれも幅員が狭く、建築基準法上のセットバックが必要であった。南側道路幅員3.5mで敷地から約500mm、北側道路は幅員3.2mで約400mmのセットバックが求められ、実質的な有効敷地はさらに制限されることとなった。
また、隣接する敷地もすべて住宅用地であり、建築中には片側に2階建て住宅の建設も決まっていた。そのため、両側に隣家が迫る中で、いかに開放感とプライバシーを両立するかが設計の大きなテーマとなった。そのような敷地条件のなか、施主からの要望は「平屋で駐車場2台分と庭を確保したい」というものであった。
この要望に応えるため、建物は庭を中心としたコの字型の平屋として計画した。
南側道路に面して玄関と駐車スペースを配置し、玄関から数段の階段を上がるとLDKへとつながる構成としている。細身の玄関ホールを抜けると、天井高2.9mのリビングが広がり、その先に明るい庭へと続く。LDK、水回り、書斎、寝室を庭を囲むようにレイアウトし、どの部屋からも中庭の気配を感じられるようにした。庭を包み込むように各室を配置したのは、植物が好きな施主が日々の暮らしの中で自然とふれあえるようにという意図からである。
素材選びも、玄関の土間やリビング開口部の一部にコンクリート床を採用するなど、鉢植えの水やりや清掃のしやすさに配慮した。加えて、経年しても飽きが来ず、時を経ることで味わいが深まるような落ち着いた素材を選んでいる。水回りの集約による動線計画など、機能性の向上にも十分配慮したが、本計画において最も重視したのは、「家族と共に時間を重ねていける住まい」であるという点である。
「カナノイエ」と名付けたのは、建物の平面がコの字型であり、外観がエル型にも見えることから、どこかカタカナの文字を思わせるかたちであったことに由来する。“仮の名” としての「カナ」という響きには、施主がこの家に愛着をもち、暮らしのなかで名前を育てていってほしいという思いも込めている。この住まいが、いつしか家族にとっての「ほんとうの名前」をもった存在へと育っていくことを願っている。
PHOTO GALLERY
Facade外観
南側ファサード
Facade外観
南側ファサード。間口を狭くしたエントランスは前面道路から視線を遮る形で、室内へスキップするスタイルとしている。
Facade外観
幅員8.2m奥域21.5mの敷地形状に配置したファサードデザイン
Entrance玄関
玄関と室内を間仕切る扉にはチークを採用
Entrance玄関
グレージュをベース色とした壁仕上げに、コンクリート(構造)×木目を掛け合わせでやわらかな印象のあるエントランス
Stairs階段
高低差のある敷地形状で、スキップしたフロアより玄関を見る
LDK
植物が好きな暮らしに寄り添える、中庭を中心とした造り
LDK
トップライトと中庭からの採光で明るい室内。コンクリート仕上げ素材×グリーンのインテリアが◎
Kitchenキッチン
アイランド型のキッチンを採用。収納スペースは背面のカウンターとパントリーを設けている
Court中庭
リビングより中庭をみる
LDK
キッチン上部は下がり天井とし、木毛セメントの天井材と異素材を採用した高さの違いでメリハリのあるデザイン性の高いLDK。
LDK
植物が好きな暮らしに配慮し、LDKは土間と中央にフローリングを採用。床仕上げをセパレートしたデザインとしている
Dining kitchenダイニングキッチン
キッチンスペースの背面は家電製品を配置するカウンターと左扉奥はパントリーを設けている。ダイニングテーブルはオリジナルデザイン制作
Pantryパントリー
シンプルになりがちな壁に映えるカラーを採用
Court中庭
居住空間に囲まれた東側に面する中庭
Court中庭
中庭の夕景。室内から漏れる照明が心地よい
Den書斎
寝室に隣接する書斎。プライベートと区分し書類整理やリモートワークに対応するコンパクトな空間
Bedroom寝室
隣接する住宅から、プライバシーに配慮しつつ自然光を取り込む位置に窓を設けた寝室
Bedroom寝室
中央に仕切りを設けセパレート可能な子供部屋
Wash basin&Bathroom洗面室&浴室
くすみカラー2色のタイルを採用した水回り。トップライトにより採光を取り込む明るい空間
Wash basin洗面室
洗面室・脱衣室の床には、土間を採用
Bathroom浴室
シャワーのみの浴室。手前に脱衣室を設けている
Rest roomトイレ
アクセント壁のやさしい配色が印象的な空間
撮影:井田佳明